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アルミの供給はリサイクルすれば解決する、は本当か
中東情勢の悪化により、原油の供給が不安視されている。
一般にはあまり知られていないかもしれないが、
アルミ新地金の供給不安が現実のものとなりつつある。
アルミ新地金とは、ボーキサイトから製錬された、純度99.7%以上のアルミを指す。
市場に出回るアルミ製品の多くは、
この純度の高いアルミにさまざまな金属を加え、
「アルミ合金」として使われている。
ここで重要なのは、
アルミと一口に言っても、その中身は一つではない
ということである。
例えば、アルミ缶とアルミサッシ。
どちらも「アルミ製品」であるが、合金としては別物である。
求められる強さ、耐食性、加工性が違うため、
添加される金属の種類や割合も異なる。
この違いを無視して
「アルミは全部まとめてリサイクルできる」
と考えると、現実を見誤る。
リサイクルすれば何でも戻せるわけではない
アルミはよく「リサイクルの王様」と呼ばれる。
確かに、アルミは溶かして再利用しやすく、
資源として非常に優れている。
しかし、ここには大きな前提がある。
違う合金が混ざれば、品質は確実に下がる
ということだ。
これはアルミリサイクルの難しさの本質でもある。
従来、この“ある程度混ざったリサイクル材”を大量に受け止める用途があった。
それが、自動車のエンジンやエンジン周辺部品である。
これらの用途では、材料中に含まれるアルミ以外の成分について、
比較的許容幅が広いものが多い。
そのため、よほど特殊な合金でなければ、
リサイクル材として使うことができた。
つまり、多少成分がばらついていても、
受け皿があったのである。
しかし逆は難しい。
自動車部品由来のアルミを、
缶やサッシにそのまま戻すことは基本的にできない。
不要な成分が多く含まれてしまうからである。
この点を理解しないまま
「国内で出たアルミは国内で回せば足りるはずだ」
と考えるのは、あまりにも単純すぎる。
“アップサイクル”は期待されるが、まだ現実解ではない
現在、合金に含まれる不要元素を取り除き、
より高いグレードへ戻して活用する、
いわゆる「アップサイクル」の研究は進められている。
もしこれが広く実用化されれば、
アルミ資源の循環は大きく前進するだろう。
ただ、現実はそう簡単ではない。
技術的なハードルに加え、
電力コストの問題が大きい。
仮に技術として成立しても、
採算が合わなければ社会実装は進まない。
少なくともここ1、2年で一気に普及するような話ではないと見ている。
夢のある研究ではある。
しかし、今起きている供給不安に対する即効薬ではない。
現実的なのは「水平リサイクル」だが、それも簡単ではない
いま現実的に進められているのは、水平リサイクルである。
アルミ缶はアルミ缶へ。
アルミサッシはアルミサッシへ。
つまり、できるだけ同じ用途、
同じグレードに戻していこうという考え方である。
方向性としては正しい。
だが、これもまた一筋縄ではいかない。
製品として世の中に出回ったものを、
使用後にきちんと回収し、選別し、集約し、
再資源化可能な状態で集めるには、当然コストがかかる。
しかもスクラップは有価物であり、常に高く買う市場へ流れていく。
きれいごとだけでは回らない。
回収にも選別にも物流にも、
すべて現実のコストが乗っている。
日本国内で発生したスクラップも、国内に残るとは限らない
ここでさらに難しいのは、
国内で発生したアルミスクラップが、
そのまま国内資源になるとは限らないことである。
現状、日本で発生したスクラップのかなりの量が、
中国市場をはじめとする海外へ流れている。
より高く評価される市場があれば、
そこへ流れるのは自然なことである。
国内メーカーが輸出向けより高い価格で買い支えれば、
国内確保はしやすくなる。
しかし、そのコストは最終的に製品価格へ反映される。
では、輸出を規制すればよいのか。
話はそんなに単純ではない。
日本は一方で、海外からアルミ素材やアルミ製品を輸入している。
しかもそれらは、日本製より低廉である場合も多い。
自国に有利な部分だけ市場原理を止める、
ということは現実には難しい。
経済はグローバルにつながっている。
需給も価格も、国内事情だけで決まるわけではない。
だからこそ、アルミ資源の問題は「精神論」でも「理想論」でもなく、
構造として捉えなければならない。
「国内のアルミはリサイクルすれば大丈夫」ではない
アルミと聞くと、多くの人が
「リサイクルできるのだから問題ない」
と思うかもしれない。
しかし実際には、
-
合金ごとに性質が違う
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混ざると品質が下がる
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高品質材へ戻す技術はまだ十分に実用化されていない
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水平リサイクルには回収・選別・物流のコストがかかる
-
国内スクラップも高値を求めて海外へ流れる
という現実がある。
つまり、アルミは確かに優れたリサイクル資源だが、
勝手に循環するわけではないのである。
必要なのは、資源循環を「できる前提」で語らないこと
私はアルミリサイクルに関わる立場として、
このことをもっと多くの人に知ってほしいと思っている。
アルミは重要な資源である。
リサイクルの価値も大きい。
それは間違いない。
ただし、それは「何もしなくても成り立つ循環」ではない。
新地金の供給が不安定になる時代だからこそ、
どのような合金があり、どのような用途に使われ、
どのように回収され、どこで混ざり、どこに流れていくのか。
その現実を踏まえて考えなければならない。
アルミはリサイクルの王様である。
しかし王様だからこそ、扱いは簡単ではない。
その複雑さを正しく理解することが、
これからの資源循環を考える出発点になるのだと思う。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久