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『働きやすさ』 責任範囲が明確か?
日本では働き方改革が進行中であるが、休みを多くとることや、
メンタルヘルスのチェックなど働き方の本質とはズレたところでの議論が多いように感じる。
私自身、中小企業の一経営者として
「働き方」
を重要な課題と捉えている。
世の中全般ではなく、自社の課題としてである。
現在、長男がアメリカにインターンシップを含めたプログラムで留学しており、日本でのバイト経験との比較を話してくれた。
日本でもアメリカでも飲食店での仕事をしているが、アメリカではシングルタスクとなっているのだという。
彼曰く、アメリカでは仕事の責任範囲が明確であることがシングルタスクを実現できている理由だと分析している。
非常に興味深い示唆を得たので、自分事として考えてみたい。
シングルタスク
レジの仕事はレジ係が行い、接客は接客係が行う。
とてもシンプルであるが、日本人的感覚では一人の従業員が様々なタスクを取り扱えたほうが融通が利いてよいのではないか?と思ってしまうだろう。
実際、私はそのように考えた。
しかし詳しく話を聞いてみると、シングルタスクというのは
「今現在」の業務を専任していることを意味している。
現在進行形で複数の仕事を請け負わない状況であるということだ。
作業分担がきちんとなされており、実際には一人のスタッフが複数の業務を行えるようトレーニングされている。
昨日と今日で業務の担当範囲が変わっても、しっかり対応できるのだそうだ。
結果として、この方式だと迷うことなく、自分が何をすればよいのかが明確となり、仕事の質が高まるようだ。
縦割りなのか?
自分の業務範囲が限定されることで、スタッフとしては働きやすいというメリットがあることは理解できた。
しかし、客の立場では業務範囲が見えるわけではないので、そのあたりはどうなのだろう?という疑問がわいてくる。
これに対しては、客から何かしら求めがあった場合には、専任のスタッフを呼び、対応してもらうのだそうだ。
作業をシングルタスクにする場合もあれば、レストランのような場所だと、客に対して専任のスタッフが担当するというパターンもある。
レストランで近くにいるスタッフに声をかけると、専任のスタッフを呼び出して対応してくれた。
タスクは確かに縦割りのように見えるが、タスク同士をつなぐ設計がなされていることを感じる。
責任範囲
クレームがあった場合は、上司が対応することになっており、スタッフが何かすることはないそうである。
この点、スタッフからするとかなり心理的安全性が保たれるのではないだろうか?
ミスの原因は自分にあったとしても、一旦そのことは置いておいて、自分の任務をまっとうすることができる。
困ったときに任せられる上司がいるというのは安心だ。
日本人は
「ミスは絶対に起こさない!」
と精神論で考えがちだが、アメリカではミスは起きうるものとして、その後の対処まで考えられている。
空港などで飛行機の遅延や荷物のロストは起こるものとして、最終的に帳尻を合わせることをベースにしている。
翻って日本
弊社を含め、多くの日本の会社では一人の社員が複合的に仕事をこなすことが多いように思う。
マルチタスクだ。シングルタスクに比べて劣るわけではないが、一人の労働者にかかる負担と責任が大きくなってしまいがちだ。
そのことによって、特に心理的負担は大きいように思う。
結果として、できる人とできない人のレベル差が大きくなり、トラブルの原因を「人」に向けがちである。
タスクを習得するにしても、シングルタスクは当然細分化してあるので理解しやすいが、マルチタスクは大きな括りになりやすく、人の能力に依存してしまう。
タスクが明確でないため、教育プログラムも明確でない。
人依存のシステムは、誰かがやめると、会社が機能しないという問題が起きてしまう。それは未然に防ぐ必要がある。
息子のアメリカでの体験談を聞いて、自分の会社組織の在り方を見直そうと思った次第である。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久