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『言葉づかいに企業文化は宿る』 経営者の姿勢が会社の空気をつくる
言葉づかいには、その人の価値観がにじみ出る。そして、言葉づかいの積み重ねは、やがて企業文化をかたちづくる。
私は中小企業の代表として、日々、言葉の扱いに気を配っている。
なかでも意識しているのは、取引先の社名に敬称をつけて呼ぶことである。
先方の担当者が目の前にいるときに「〇〇さん」と呼ぶのは当然としても、社内での会話においても「〇〇さん」と“さん付け”を徹底している。
これは、顧客であれ外注先であれ、線引きをせず、すべての取引先に対して敬意をもって接するという、私自身の考え方を反映したものである。
また「業者」という言葉も使わないようにしている。
どこか見下した響きがあるからだ。
実際、取引先には、自社にお金を払ってくれる相手もいれば、自社が支払う側になる相手もいる。
いずれも、事業を遂行する上で欠かせない存在である。
確かに取引規模の大小によって、関係性の重みは異なるかもしれない。
しかし、相手を「人」として見れば、上下の区別はない。
これは理屈というよりも、感覚的な話である。
将来的に、関係性がどう変化するかも分からない。
今は小口の発注先であっても、数年後に最重要の顧客になっている可能性は十分ある。
だからといって、損得勘定で敬意を払うわけではない。
私の中にあるのは、目の前の相手を軽んじたくないという純粋な気持ちである。
ある日、ある会社に電話をかけ、社長さんに取り次いでほしいと伝えた。
すると、電話口の女性が、受話器の向こうで「社長~、〇〇から電話~」と呼びかける声が聞こえてきた。
たまたまだったのか、いつもこうなのか。
家族経営の会社であれば、距離感が近くなるのは理解できるが、少々不安になった。
こうした何気ないやりとりにこそ、その会社の空気が表れる。
言葉だけではない。
あいさつも同様である。
郵便や宅配業者の方が荷物を届けに来たとき、
「おはようございます」
「ありがとうございます」
と一言添えるだけで、その場の空気が変わる。
逆に、無言で荷物を受け取るような会社には、どこか重苦しい雰囲気が漂っているように感じる。
自社においても、まだまだ気になる点はある。
社員全員が同じ感覚を持っているとは限らない。
だからこそ、経営者である私が、まず率先して示す必要がある。
あいさつも、言葉づかいも、小さなことのように思えるが、それらは確実に企業文化を形づくっていく。
丁寧な言葉は、人を尊重する姿勢の表れである。
そしてその姿勢こそが、信頼を生む土壌となる。
今日もまた、社内のどこかで聞こえる「〇〇さん」というやりとりに、私はほっと胸をなでおろすのである。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久