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『行動が先、思考は後』 動いたからこそ見えた真のボトルネック
先日、待望のリサイクル設備が当社に納入された。
設置および試運転の調整も無事に完了し、いよいよ本稼働へと進む段階に入った。
私は現場に対し、早期の稼働開始を指示した。
この設備は、稼働時間がそのまま生産量に比例する。設備とは概してそういうものである。
ゆえに、理想的な運用とは、始業と同時にスイッチを入れ、終業ぎりぎりまで止めずに動かし続けることにある。
しかし、である。
翌日になっても設備が一向に動き出す気配がない。
違和感を覚え、現場スタッフに事情を尋ねたところ、スタートできない理由が2点あるという。
うち1点は現場の判断で対処可能だが、もう1点は現場単独では判断が難しい内容であった。
私はその説明を受け、なるほどと納得した。
確かに、そのまま動かしていたら問題が発生していた可能性がある。
私はその場で簡易的な対応策を指示した。
すると、現場も即座に応えてくれ、生産は無事スタートを切ることができた。
この一件で強く感じたのは、現場が「止める」という判断をしてくれたことの価値である。
経営者の立場からすれば、設備が止まっていることに焦りを感じるのが自然である。
だが、現場のスタッフは私の指示を鵜呑みにせず、目の前の現実をしっかり見て判断してくれた。
経営層は全能ではない。
組織の全体像を俯瞰しているつもりでも、細部までは把握できていないことが多い。
現場で日々起こる些細な変化や兆しは、実際に手を動かしている人間にしか分からない。
だからこそ、組織には「階層」がある。
問題はその階層間の「つなぎ目」にある。
責任範囲の境界線が明確すぎると、逆に柔軟性が失われる。
組織が硬直化する原因の多くは、この境界に重なりや余白がないことに起因している。
だが、これを解決するのに必要なのは、往々にして複雑なルールではなく、たった一言の声かけだったりする。
「これでいいですか?」
「ちょっと気になることがあります」
そうした小さな一声が、結果的に大きなトラブルを未然に防ぐことがある。
現場とのコミュニケーションは、最もシンプルで、かつ最も効果的なリスクマネジメントである。
人間は知的な存在だが、こと仕事に関しては「知っていること」と「できること」はまったくの別物である。
どれほど頭で理解していても、実際にやってみなければ分からないことがある。
体験してはじめて、知識が実感を伴って身につく。
だから、まず動いてみることが何より重要である。
動けば、現実の課題が見えてくる。
理想論ではなく、現場目線での具体的な問題が顕在化する。
そこからようやく、実効性のある対策が打てるのである。
動かなければ、課題は現れない。いや、現れないのではなく、見ようとしていないだけなのかもしれない。
経験に勝る学びはない。
これからも、まずは動くことを恐れずにいこうと思う。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久