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『ESGは理想か、幻か』 投資の潮流に潜む政治とビジネスの思惑
ESG投資にかげり ― 理念と現実のはざまで
日本経済新聞2025年6月27日付に「ESGマネー世界で逆流 欧州で初の流出超、『見せかけ』排除で選別も」と題する記事が掲載されていた。
内容は、欧州のESG(環境・社会・企業統治)ファンドで初めて資金の流出が流入を上回り、世界的に脱炭素投資が減速する中、最後の砦であった欧州でも資金の後退が鮮明になったというものである。
グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)への視線が厳しさを増し、ファンドの選別が進んでいるという。
私自身、ESG投資のように環境負荷を低減させるインセンティブを経済の仕組みの中に組み込む発想は間違っていないと考えている。
しかしながら、環境負荷の評価は極めて難しいのが現実である。
例えば、トランプ元米大統領のように二酸化炭素による地球温暖化自体に懐疑的な立場を取る人も存在する。
一方で、EUを中心に脱炭素が強力に推し進められているが、そこでは太陽光発電やEVが善とされ、原発や化石燃料を消費する内燃機関は悪とされる風潮がある。
私の目には、どちらも政治的見地からの意見に見えて仕方がない。
1960年代の日本における公害問題のように、明確に人体に甚大な被害が出る事象では、科学的見地から白黒をはっきりさせることが可能である。そのような場合は、経済的インセンティブを用いるまでもなく、法規制で解決すれば済む話である。
しかし、地球温暖化の議論が厄介なのは、問題が地球規模であり、かつその因果関係の立証に長い時間軸が必要である点だ。
例えば、コロナ禍において人類の経済活動が約二年停滞し、CO₂排出量は大きく減少したが、それが地球温暖化に与えた影響はほとんどなかったとの報告もある。
確かに産業革命以降、人類のCO₂排出量が増加していることは疑いようがないし、実際に地球の平均気温は上昇傾向にある。
しかし、その原因は本当にCO₂だけなのか、太陽活動など自然要因も影響しているのではないかという説も根強い。
何が真実かは、おそらく誰にも完全にはわからないのが現状であろう。
こうした科学的な不確実性が残るからこそ、地球温暖化問題は政治的に利用されやすい。
私が疑問を感じるのは、EUの姿勢である。
パリ協定から始まるSDGsの理念そのものは理想的であり、誰も異を唱えにくい大義名分となっている。
しかし、EUが実際に推進している政策には賛同しかねる部分が多い。
一例を挙げると、かつてガソリン車で覇権を取れなかった欧州勢は、ディーゼル車に活路を見出し「クリーンディーゼル」を標榜したが、結果的には排ガス試験の不正問題を引き起こし、その目論見は崩れ去った。
次にEVを推進するべく補助金を投入したが、中国製EVの台頭が現実味を帯びると、途端に補助金を打ち切り、中国勢の参入を阻む動きに転じた。
もし地球温暖化対策が大義であるなら、製品がどこの国のものかなど問題にすべきではないはずだが、真の思惑は別にあるように感じられる。
さらに、EV一辺倒の姿勢から、最近ではと「合成燃料であれば内燃機関も認める」いう方向へシフトしつつある。
こうしたEUの方針転換の数々を見ると、
「地球温暖化CO₂原因説は果たして本当なのか」
という疑念すら覚えてしまう。
結局のところ、ESGは課題解決の手段であるというより、ビジネストレンドとして消費されている面が強いのではないかと感じている。
私はESGという発想自体はポジティブに受け止めているが、市場は失望し始めているのかもしれない。
制度も確かに重要である。
しかし、最終的に科学的かつ経済的なメリットを世界に示すことができるのは、規制や大義ではなく技術革新以外にないのではないか。
今後のESG投資の行方は、その本質が理念で終わるのか、それとも実効的な解決策としての技術革新に結実するのかにかかっているように思えてならない。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久