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『パワハラの構造を考える』 成果主義と閉鎖性がもたらす暴走

スポーツ指導を行う指導者はパワハラ要素が強い、といったら言い過ぎだろうか。
いわゆる「体育会系」という言葉が今なお生きていること自体、その背景に何かしらの構造的問題があるのではないかと思う。

パワハラという言葉が世間に広く認知されても、未だに横行しているのはなぜか。
秋田豊監督の事例のように、調査や再発防止策が公表されるケースは氷山の一角であろう。

http://kochi-usc.jp/news/news-52683/

アスリート、クラブチーム、学校といった枠を超え、パワハラが発生する構造には共通点があると考えられる。


パワハラの典型類型

典型的なパワーハラスメントの類型は以下のとおりである。

  • 身体的な攻撃(暴行、傷害)

  • 精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言)

  • 人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)

  • 過大な要求(遂行不可能な課題や過度の強制)

  • 過少な要求(仕事を与えない、能力以下のことを命じる)

  • 個の侵害(私生活への過度な干渉)

これらは表面的な現象に過ぎない。
重要なのは

「なぜ指導者が抑圧的な指導をしたくなるのか」

という根源的な要因を理解することである。


指導者の想いと選手のズレ

成果を出す指導者の資質として「誰よりも勝ちにこだわる」ことが挙げられる。
この資質自体は否定できない。
勝利や結果にこだわる姿勢が、選手やチームを成長させる原動力となるからである。

しかし問題は、その想いの強さに指導者と選手の間で隔たりがあることである。
特に学生であれば、生活の中心が必ずしも競技だけではないのは当然である。
その隔たりを強引に埋めようとする過程で、パワハラが生まれる。

結果が出せない選手に対し「やる気を見せろ」と迫ったり、意に反する言葉を言わせたり、過度なペナルティーを課す。
閉鎖的なチーム環境では、選手は
「ここから外れる=自分の居場所を失う」
と錯覚しやすい。
チームメイトも同じ構造にからめ取られているため、逃げ場を失うのである。


成功体験が暴走を招く

暴力や恐怖で一時的に結果が出てしまうと、それが指導者にとって「成功体験」となってしまう。
ここに最大の落とし穴がある。
その後、同じ手法が繰り返され、エスカレートしていく。
事件化しているケースの多くが、この構造を裏付けている。


防止のための条件

防ぐ手立てはあるだろうか。

第一に、指導者が「やってはいけない指導方法」を学ぶことである。
自分が選手時代に受けた指導をそのまま踏襲するだけでは時代に合わない。
指導法のアップデートが不可欠である。

第二に、行き過ぎた指導に対しては厳しい処分を科す仕組みが必要である。
指導者だけでなく、チームオーナーや学校関係者が「勝てばよい」という思考に支配されていれば、パワハラは見逃され、隠蔽される。

第三に、監査役や社外取締役のように「ブレーキ役」を指導者とは別に設けることだ。
指導者ひとりにアクセルとブレーキの両方を求めるのは無理がある。
閉鎖的な環境を開き、外部の目を入れることで、指導者も健全に力を発揮できる。


スポーツに限らない構造

指導者の暴走はスポーツに限らない。
企業でも、家庭でも起きる。
親が子どもに暴言や暴力をふるい始めれば、同じようにエスカレートする危険がある。

一度タガが外れれば取り返しがつかない。
だからこそ「やらない」ことが肝心である。
閉鎖性を壊し、オープンにする仕組みを整えることで、成果主義と健全な育成を両立させることができるはずである。

会社経営において、オーナー経営者はパワハラの歯止めがかかりにくい。
しかしSNS時代、社会的に間違った行為は世の中にさらされる。
口止めなどできるはずもない。
世間から常に見られていることを意識しなければならない。

 

豊アルケミー株式会社
代表取締役  桐山 宗久