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新しい社員は、浦島太郎である
新しい社員が入社すると、
覚えてもらわなければならないことは山ほどある。
業務マニュアルとして、
「何をするか」
をまとめた資料は一応そろっている。
しかし、それだけで仕事ができるかというと、
正直なところ、それは無理である。
仕事というのは、
単なる作業の集合体ではない。
背景や理由、
なぜそうなっているのかという理解があって、
はじめて腹落ちする。
人には知識欲がある。
新しいことを知り、
理解できた瞬間に、
確かな快感を得る。
もちろん、
勉強そのものが苦手だという人もいるだろう。
それでも私は、
仕事において
「知らなかったことを知れる」
という体験は、
本来とても面白いものだと思っている。
古参メンバーと、新しい社員の間にある溝
私たちのような小さな会社では、
創業期から一緒に会社を育ててきたメンバーがいる。
システムも、ルールも、やり方も、
すべて試行錯誤しながら、
自分たちの手で作り上げてきた。
だから彼らは、
なぜそうなっているのかを、
いちいち説明できなくても自然に理解している。
「気づいたら身についていた」
という状態である。
しかし、そこに新しい社員が加わると話はまったく違ってくる。
新しい社員は、
何も知らない状態からのスタート である。
これは当たり前のことだが、
経営者や先輩社員は、
意外とこの前提を忘れてしまう。
「こんなことは分かるだろう」
「見ていれば覚えるだろう」
こうした考え方は、
はっきり言って傲慢である。
私たち古参の人間が分かっているのは、
自分たちで作り、
積み上げてきた時間があるからだ。
新しい社員からすれば、
長年かけて作られた仕組みを、
ゼロから一気に理解しなければならない。
これは想像以上に大変なことである。
「見て覚えろ」はナンセンスである
仕事を
「自然に見て覚えろ」
というのは、もはや通用しない。
いや、通用しないというより、
そもそも合理的ではない。
理解の土台がなければ、
見えているものの意味が分からないからである。
そこで私は、
業務の中で使う専門知識を、
きちんと教える時間
を取ることにした。
朝礼5〜10分の「授業」
具体的には、朝礼の時間に5〜10分ほど。
用語の説明だけでなく、
もう少し踏み込んで、
「なぜそうなるのか」
「どういう理屈なのか」
まで話す。
感覚としては、
仕事というよりも、
理科や社会の授業に近い。
「これは知っておいてほしい」
「ここは理解しておくと、判断が変わる」
そういったポイントを、
資料を使いながら説明する。
口頭だけでは伝わらないため、
資料は必ず作成し、
クラウド上に保管している。
社員は、必要なときにいつでも見返すことができる。
教えることは、教える側の学びでもある
この取り組みを始めて、
実は一番勉強になっているのは、
私自身かもしれない。
資料を作る過程で、
自分の知識を改めて整理することになる。
すると、
「意外と曖昧に理解していたな」
「ここは思い違いをしていたな」
という点が、次々に見えてくる。
教えることは、
教える側の理解を、
最も深める行為でもある。
新しい社員は、浦島太郎である
新しい社員は、
決して能力が低いわけでも、
やる気がないわけでもない。
ただ、
浦島太郎のように、
まったく違う世界に
突然放り込まれているだけ
なのである。
ほったらかしにしたら、
持っている玉手箱をあけて、
老化だけ進んでしまうのである。
そうさせないよう、
新しい知見をインプットして
新しい世界の良さを感じてもらわなければならない。
その前提に立てるかどうか。
それが、経営者や先輩社員に問われているのだと思う。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久