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マルチな人材より、分業できる仕組み
一人の人が、マルチにいろいろな仕事をこなせる。
これは、その人個人で見れば大きな強みである。
経営者の目線で見ても、いろいろなことができる人は能力が高く、非常に重宝される存在である。
現場もできる。
営業もできる。
お客様対応もできる。
社内調整もできる。
こういう人がいてくれたら、会社としてはとても助かる。
しかし、現実にはそのような人はなかなかいない。
「あれもこれもできる人がほしい」は経営者の願望である
「あれもこれもできる人がいたらいいのに」
そう思うことはある。
特にスモールビジネスでは、人員に余裕がない。
一人が複数の役割を担わなければならない場面も多い。
だから、マルチに動ける人を求めること自体が、必ずしも間違いだとは思わない。
しかし、それを前提にした経営は危うい。
経営的な視点で言えば、あれもこれもできる人を求めすぎることは、経営者の怠慢と言ったら言い過ぎだろうか。
本来は、会社として仕事を整理し、役割を分け、誰がやっても一定の成果が出るように仕組み化していく必要がある。
それをせずに「できる人」に頼り続けると、会社はいつまでも人依存から抜け出せない。
有能な人に頼るほど、会社は不安定になる
マルチに仕事ができる人は貴重である。
何でもこなせるから、その人に仕事が集中しやすい。
「あの人に任せておけば大丈夫」
「あの人に聞けば分かる」
そういう状態は、一見すると安定しているように見える。
しかし実際には、とても不安定である。
もしその人が会社を去ったらどうなるか。
体調を崩したらどうなるか。
急に休まなければならなくなったらどうなるか。
その瞬間に、会社の機能が大きく落ちてしまう。
これは、その人が悪いわけではない。
むしろ能力が高いからこそ起きる問題である。
問題は、その人に依存しすぎる会社の仕組みにある。
分業化は、仕事が仕組み化されている証である
やはり、少しずつであっても分業化は進めていく必要がある。
分業できるということは、仕事が整理されているということである。
どの仕事に、どのような工程があり、どのような判断が必要で、どのような成果を出すべきか。
それが明確になっているからこそ、役割を分けることができる。
つまり、分業化は仕組み化の証左である。
逆に、分業できない仕事は、まだ人の感覚や経験に依存している可能性が高い。
「あの人だからできる」
「あの人しか分からない」
という状態である。
それでは、会社としての再現性が低い。
分業によって、人は深く成長できる
分業には大きなメリットがある。
一つは、それぞれの人が自分の担当領域に集中できることである。
担当する範囲が明確になれば、その人は自分の仕事を深めることができる。
ただ作業をこなすだけでなく、改善点に気づきやすくなる。
専門性も高まっていく。
あれもこれもやる状態では、どうしても一つひとつが浅くなりやすい。
現場作業もやる。営業もやる。お客様対応もやる。管理もやる。
もちろん、それをこなせる人もいる。
しかし、誰にでもできることではない。
むしろ、どこかに無理が出ることの方が多い。
どこかが雑になる。
どこかが遅れる。
どこかで確認漏れが起きる。
最初からマルチな人を求めるよりも、仕事を分け、それぞれが担当領域で力を発揮できるようにした方が、結果として成果は高まりやすい。
分業のデメリットもある
もちろん、分業にもデメリットはある。
一つは、縦割りになりやすいことである。
「それは自分の仕事ではありません」
「そこは別の担当です」
そういう意識が強くなると、会社全体の動きは悪くなる。
分業は必要だが、担当外のことに無関心になってはいけない。
もう一つは、一定規模以上のビジネスでなければ、人を複数雇うこと自体が難しいという現実である。
特に小さな会社では、理想通りに人を配置することはできない。
一人が複数の役割を担わざるを得ない場面は必ずある。
だから、今すぐ完全な分業を実現することは難しい。
まずは仕組みの上で分業する
それでも、考え方としては分業化を進めておくべきだと思う。
たとえ今は一人の人が複数の仕事を担当していたとしても、仕組みの上では仕事を分けて整理しておく。
現場作業。
営業。
顧客対応。
事務処理。
品質管理。
改善活動。
それぞれの仕事を分解し、役割として見えるようにしておく。
そうしておけば、将来的に人を配置しやすくなる。
採用する際にも、どの役割の人が必要なのかが明確になる。
「何でもできる人がほしい」では、採用も曖昧になる。
しかし、「この業務を担える人が必要だ」となれば、求める人物像も具体的になる。
人に頼る経営から、仕組みで動く経営へ
マルチに働ける人は貴重である。
そういう人が会社にいてくれることは、本当にありがたい。
しかし、その人に頼り切ってはいけない。
人の能力に依存する経営は、一見強そうに見えて、実はもろい。
強い会社にしていくためには、仕事を整理し、役割を分け、仕組みで動かせるようにしていく必要がある。
最初から完全な分業は難しい。
特に小さな会社では、どうしても兼務が発生する。
それでも、頭の中では分業して考える。
仕組みの上では分けておく。
仕事を属人化させず、少しずつ再現性を高めていく。
マルチな人を探すよりも、マルチでなくても力を発揮できる仕組みをつくる。
これが、会社を安定させ、成長させていくために必要な考え方ではないかと思う。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久