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盗まれた金属を売らせない仕組み

金属盗対策法への対応のため、警察署に届出をしてきた。

正式には「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」という。
名前だけ聞くと少し難しいが、簡単に言えば、盗まれた金属が売買されにくい仕組みをつくるための法律である。

今回、当社は特定金属くずを買い受ける事業者として、営業開始届出書を提出した。

なぜこの法律ができたのか

背景にあるのは、金属盗の増加である。

特に問題になっているのが、太陽光発電施設からの銅線ケーブルの盗難である。
警察庁も、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗が増加していることを、この法律制定の背景として説明している。

銅は電気をよく通すため、電線やケーブルに多く使われている。
しかも資源として価値がある。
つまり、盗む側から見ると「換金しやすいもの」になってしまう。

盗まれるのはケーブルだけではない。
側溝のふた、給湯器、工事現場の資材、農業用の設備、太陽光発電所の部材など、金属が使われているものは社会のあちこちにある。

金属は、私たちの暮らしを支えるインフラそのものだ。

だから金属盗は、単に「物が盗まれた」という話では終わらない。電気設備が止まる。
工事が遅れる。
農業や事業に支障が出る。
復旧費用もかかる。
地域の安全にも影響する。

盗まれた側の被害は、金属そのものの価格以上に大きい。

 

ポイントは「盗品を売りにくくする」こと

この法律の考え方は、盗む人を直接取り締まるだけではない。

盗まれた金属が、簡単に売れないようにする。

ここが大きなポイントである。

盗品であっても、どこかで買い取られて現金化できてしまえば、窃盗は繰り返される。
反対に、売るときに本人確認が必要で、取引記録が残り、不審なものは警察に申告されるとなれば、盗んだ金属を処分しにくくなる。

つまり、出口をふさぐ法律である。

 

事業者に求められること

金属盗対策法では、特定金属くずの買受けを行う事業者に、いくつかの義務が課される。

主な内容は、
・営業所ごとの届出
・買受け相手の本人確認
・本人確認や取引内容の記録作成・保存
・盗品の疑いがある場合の警察への申告
などである。
警察庁の資料でも、これらが法律の概要として示されている。

また、令和8年6月1日時点で既に特定金属くず買受業を営んでいる事業者については、3か月の経過措置があり、令和8年8月31日までに届出が必要とされている。

今回の届出は、その対応である。

 

面倒な手続きではあるが、意味はある

正直に言えば、事業者側からすると手続きは増える。

売りに来た本人確認をする。
記録を残す。
保存する。
不審な取引には注意する。

現場の手間は確実に増える。

しかし、金属スクラップを扱う仕事は、社会からの信頼があって成り立っている。

金属スクラップは、見方を変えれば資源である。
不要になった金属を回収し、選別し、再び原料として使える状態に戻す。
これは循環型社会にとって必要な仕事である。

一方で、その流通の中に盗品が紛れ込めば、業界全体の信用が傷つく。

だからこそ、きちんとした事業者が、きちんと手続きを行い、記録を残し、怪しいものは買わないという姿勢を明確にすることが大切だ。

 

金属リサイクルは「何でも買う仕事」ではない

一般の方から見ると、金属スクラップ業者は「金属なら何でも買うところ」と見えるかもしれない。

しかし、本来そうではない。

どこから出たものか。
誰が持ち込んだものか。
事業活動の中で発生したものか。
不自然な形状ではないか。
量や内容に違和感はないか。

そうしたことを確認しながら、適正に買い受ける必要がある。

金属リサイクル業は、単に金属を買って売る仕事ではない。

社会の資源循環を支える仕事であり、同時に、不正な流通を入り込ませない責任もある。

 

信頼される業界であるために

今回の法律は、業界にとって負担であると同時に、信頼を高める機会でもあると思う。

盗まれた金属が簡単に売れない社会になれば、金属盗は減っていく可能性がある。
地域の設備やインフラを守ることにもつながる。

そして、適正に営業している事業者にとっては、
「きちんとした取引をしている」
と示すことにもなる。

金属は社会を支える資源である。

その資源を扱う者として、法令を守ることはもちろん、日々の取引の中で違和感を見逃さない姿勢を持ち続けたい。

今回の届出は、ただの事務手続きではない。

金属リサイクル業が、社会から信頼され続けるための一つの区切りである。

 

豊アルケミー株式会社
代表取締役  桐山 宗久