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言葉をそろえることは、仕事をそろえること
日経新聞のビジネス面で、トヨタが車の部品用語を大幅に削減し、グループ内で使う用語を約5,000語に統一することを目指している、という記事を読んだ。
驚いたのは、その削減幅である。
9割削減して5,000語にするということは、単純に考えれば、現在は約45,000語もの専門用語が存在していることになる。
これは本当に大変なことだと思う。
用語が多いということは、理解の負担が大きいということ
会社の中で使われる言葉は、ただの言葉ではない。
その言葉を聞いたときに、同じものを思い浮かべ、同じ意味で理解し、同じ前提で仕事を進められることが重要である。
しかし、専門用語が45,000語もあるとすれば、それを社内の人たちが正しく理解し、さらに同じ意味で使い続けることは、簡単ではないはずである。
もちろん、全員が45,000語すべてを使っているわけではないと思う。
それでも、部署ごと、工程ごと、立場ごとに覚えなければならない言葉が大量に存在しているということになる。
しかも、それをトヨタグループはこれまでやりきってきた。そこにもまた、ものすごさを感じる。
当社にも、言葉の難しさがある
私の会社でも、さまざまな専門用語がある。
金属リサイクルの現場では、材料名、形状、発生工程、品質、荷姿、取引条件など、日常的に多くの言葉を使っている。
さらに難しいのは、社内で使っている言葉と、取引先が使っている言葉が必ずしも一致しないことである。
逆に、同じ言葉を使っていても、意味や範囲が微妙に違うこともある。
こちらがお客様に合わせることも簡単ではない。
かといって、お客様にこちらの呼び方へ合わせてもらうことも現実的ではない。
結果として、現場では複数の呼び方や意味を、状況に応じて理解する必要が出てくる。
これは、言葉の能力そのものが仕事の能力に直結しているということでもある。
人は新しい言葉を作り続ける
人間は、新しい概念が生まれると、それを表すための言葉を探したり、作ったりする。
新しい技術、新しい商品、新しい管理方法、新しい取引条件が出てくれば、それに応じて新しい言葉が生まれる。
これは自然なことだと思う。
言葉が増えるということは、仕事が細分化され、知識が深まり、扱う対象が高度になっていることでもある。
しかし一方で、言葉が増えすぎると、それ自体が非効率を生む。
同じものを別々の名前で呼ぶ。
似たような言葉が乱立する。
人によって解釈が違う。
新人が覚えきれない。
部署間で話が通じにくい。
そうなると、言葉は仕事を助ける道具ではなく、仕事を難しくする壁になってしまう。
言葉の整理は、経営の整理でもある
今回の記事を読んで感じたのは、用語の整理は単なる言葉の整理ではないということだ。
言葉を整理するということは、仕事の定義を整理することである。
何を同じものと見るのか。
何を別のものと見るのか。
どの言葉を正式名称とするのか。
どの言葉を使わないことにするのか。
そこには、会社としての判断が必要になる。
だからこそ、用語の整理は、業務の整理であり、知識の整理であり、経営の整理でもある。
特にこれからは、AIを使って社内の言葉を整理していくことが求められるのだと思う。
膨大な文書、図面、見積書、メール、報告書の中にある言葉を拾い出し、重複や表記ゆれを見つけ、意味の近いものをまとめていく。
これは人間だけでやるには大変な作業だが、AIが得意とする分野でもある。
曖昧さを扱える人間とAI
それにしても、人間はすごい。
多少言葉が曖昧でも、前後の文脈や相手の表情、過去の経験から意味を補いながら理解している。
「たぶん、これはあのことを言っているのだろう」
「このお客様がこの言葉を使うときは、この意味だろう」
「現場でこの言い方をしたら、こう伝わるだろう」
私たちは、日々そうした曖昧さを処理しながら仕事をしている。
そして最近は、AIもまた、その曖昧さにかなり対応できるようになってきている。
言葉をただ辞書的に理解するのではなく、文脈の中で捉える。
似た意味の言葉を整理する。
表記の違いを吸収する。
人間が感覚的にやってきたことを、AIも支援できるようになってきた。
言葉は曖昧だから難しい。
しかし、曖昧だからこそ、人間の知恵が働く。
そして今、その曖昧な言葉の世界に、AIという新しい道具が加わってきている。
用語をそろえることは、単に呼び方を統一することではない。
仕事の認識をそろえ、組織の理解をそろえ、会社の動きをそろえることなのだと思う。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久