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新規事業のヒントは、お客さんの困りごとにある

既存のビジネスを活かしながら、新しい事業をつくっていきたい。

以前から、そんなことを考えている。

まったく経験のない分野に飛び込むのではなく、現在の事業で培ってきた知識や技術、設備、取引先との関係などを活用しながら、新たな収益の柱をつくりたいのである。

しかし、これがなかなか難しい。

 

アイデアは出ても、採算性で行き詰まる

新しいビジネスのアイデアが、まったく思いつかないわけではない。

「あれはできないだろうか」
「この設備を使って、別の商品をつくれないだろうか」
「このサービスには需要があるのではないか」

そうしたアイデアはいくつも出てくる。

ところが、少し深掘りをしてみると、採算性の問題にぶつかる。

市場規模が小さかったり、必要な設備投資が大きかったり、人手がかかりすぎたりする。

一定の売上は見込めても、十分な利益が残らないこともある。

アイデアとしては面白くても、ビジネスとして継続できなければ意味がない。

新しいことを考える難しさは、思いつくことではなく、利益の出る仕組みにまで落とし込むことにあるのだと思う。

 

自分はゼロから生み出すタイプではない

そもそも、自分が何もないところから新しいものを生み出す、いわゆる「ゼロイチ」が得意な人間なのかと考えると、客観的にはそうではないと思う。

もちろん、アイデアを考えることは嫌いではない。

しかし、世の中に存在しない商品やサービスを発明し、新しい市場そのものをつくるような能力が自分にあるかといえば、そこまでの自信はない。

そうであるならば、無理にまったく新しいものを生み出そうとする必要はない。

既存の事業や業界の中から、価値のある部分を見つけ出し、そこを切り出して一つの事業として成立させる。

あるいは、これまで複数の工程として提供してきたものの中から、顧客が特に必要としている部分を取り出し、専門的に担っていく。

自分には、そうした方向の方が合っているのではないかと思う。

 

自分の中だけで考えても答えは出にくい

ただし、既存事業のどの部分を取り出せばよいのか。

そこが最も難しい。

自分にとって長年続けてきた仕事は、どれも当たり前に見えてしまう。

自社が自然に行っている対応や工夫についても、「他社も同じようにやっているだろう」と考えてしまいがちである。

しかし、実際には、自分たちが当たり前だと思っていることが、他社にとっては簡単にできないことかもしれない。

また、自社の強みを見つけたとしても、それがそのまま顧客がお金を払いたい価値になるとは限らない。

社内から自社の強みを眺めるだけでは、新規事業の答えにはたどり着きにくいのだと思う。

 

ヒントは顧客の困りごとにある

そう考えると、自分たちの中から無理にアイデアをひねり出すよりも、お客さんの困りごとを探した方が早いのかもしれない。

現在の取引先は、何に時間を取られているのか。

どのような作業を面倒だと感じているのか。

本当は外部に任せたいが、引き受けてくれる会社がないことは何か。

大きな問題ではなくても、日常的に繰り返される小さな不便や無駄はないか。

こうしたことを丁寧に聞いていけば、新しい事業のヒントが見つかる可能性がある。

優れた新規事業は、奇抜な発想から生まれるとは限らない。

お客さんが現在も困っており、その解決のためにすでに時間や人手、費用を使っていること。

その中に、自社の既存の経営資源を使って解決できるものがあれば、事業になる可能性は高まる。

大切なのは、「自社に何ができるか」だけではなく、「お客さんは何に困っているか」を起点にすることだろう。

 

会社の現在地を、もう一度見直す

自社を知るための方法として、SWOT分析をはじめ、さまざまなフレームワークがある。

私自身も、これまでに何度か取り組んできた。

ただし、以前に一度分析したからといって、その結果がいつまでも有効とは限らない。

会社の設備も、人材も、取引先も、技術も変化している。

経営者自身の経験や考え方も変わっている。

会社のフェーズが変われば、強みや弱み、機会や脅威も変わる。

そうであるならば、現在の会社を前提として、あらためて分析してみる必要がある。

 

社員を巻き込むことで、当たり前を疑う

次に取り組むときには、自分一人で考えるのではなく、社員も巻き込んでみたい。

経営者から見た会社と、現場で働く社員から見た会社は違う。

営業、回収、選別、加工、事務など、それぞれの立場によって、見えている強みや課題も異なるはずである。

社員にとっては日常的な工夫であっても、経営者がその価値に気づいていないこともある。

反対に、経営者が強みだと思っていることを、社員はそれほど重要だと感じていない場合もある。

複数の視点を持ち寄ることで、自分が当たり前だと思って見過ごしていたものが、実は自社独自の価値だったと気づくかもしれない。

新規事業を考えることは、新しいアイデアを出す作業であると同時に、今ある会社を新しい目で見直す作業でもある。

 

新規事業は、すでにあるものの組み合わせかもしれない

新規事業という言葉を聞くと、どうしても革新的な商品やサービスを考えなければならないように感じる。

しかし、自社の中にすでにある技術、設備、知識、人材、信用、顧客との関係を組み合わせ直すことでも、新しい事業は生まれる。

必要なのは、ゼロから生み出す才能だけではない。

自社の中にあるものを見つめ直し、顧客の困りごとと結びつけ、採算の取れる形に組み直す力である。

答えは、自分の頭の中だけにあるのではない。

社員が何気なく行っている仕事の中にあるかもしれないし、お客さんがこぼした小さな不満の中にあるかもしれない。

まずは、自社の当たり前を疑うこと。

そして、お客さんの話をこれまで以上に丁寧に聞くこと。

新規事業への入り口は、そのあたりにあるのではないかと思っている。

 

豊アルケミー株式会社
代表取締役  桐山 宗久