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レンガを積むこと自体が面白い
「3人のレンガ積み職人」という有名なたとえ話がある。
レンガを積んでいる職人に、旅人が「何をしているのですか」と尋ねる。
1人目は、
「レンガを積んでいる」と答える。
2人目は、
「家族を養うために働いている」と答える。
3人目は、
「後世に残る立派な大聖堂をつくっている」と答える。
同じ作業をしていても、目の前の仕事だけを見ている人と、その先にある大きな目的を見ている人とでは、仕事に対する姿勢が違う。
このたとえ話は、ビジョンを持つことの大切さを、非常に分かりやすく伝えている。
しかし先日、私はミニチュアのレンガ積みを体験しながら、少し違うことを感じた。
レンガを積むこと自体が面白い
実際にやってみると、レンガを積むという作業そのものが面白かった。
レンガの位置をそろえる。
傾かないように置く。
隙間を均等にする。
全体がきれいに見えるように調整する。
単純に見える作業にも、考えることや工夫することがたくさんある。
少し位置がずれれば気になるし、うまく積めればうれしい。前よりもきれいに仕上げたいという気持ちも生まれる。
何をつくっているのかという大きな目的は、確かに大切である。
大聖堂をつくっていると思えば、自分の仕事に誇りを感じることもできるだろう。
しかし、それだけではなく、目の前のレンガ積みそのものに面白さを感じることも、同じくらい大切なのではないかと思った。
目の前の仕事に向き合う
仕事には、大きなビジョンや社会的な意義が必要だとよく言われる。
会社が何を目指しているのか。
社会にどのような価値を提供するのか。
将来、どのような姿になりたいのか。
そうした方向性が明確であることは、組織にとって重要である。
一方で、実際に仕事をする人が毎日向き合うのは、大きなビジョンそのものではない。
一つひとつの作業であり、目の前の商品であり、目の前のお客様である。
その仕事をどうすれば、もう少し速くできるのか。
どうすれば、よりきれいに仕上げられるのか。
どうすれば、失敗を減らせるのか。
どうすれば、もっと良いものにできるのか。
そうした小さな工夫や改善を積み重ねることが、最終的には大きな成果につながっていく。
立派な大聖堂も、結局は一つひとつのレンガを丁寧に積まなければ完成しない。
ビジョンを掲げれば人が動くのか
経営者やリーダーは、ビジョンを掲げることが大切だと言われる。
確かに、組織が向かう方向を示すことは、リーダーの重要な役割である。
しかし、リーダーが大きなビジョンを語れば、それだけで全員が共感し、意欲的に動き始めると考えるのは、少し幻想ではないだろうか。
どれほど立派な目的を掲げても、日々の仕事が苦痛で、工夫する余地もなく、自分の成長も感じられなければ、人は長く前向きには働けない。
反対に、目の前の仕事に面白さを感じ、少しずつ上達し、自分の工夫が結果につながる実感があれば、人は仕事に主体的に関わるようになる。
大きなビジョンは、人を動かす唯一のものではない。
目の前の仕事そのものに意味や面白さを感じられる環境をつくることも、リーダーに求められる役割なのだと思う。
大きな仕事は、小さな仕事の積み重ね
ビジョンは大切である。
自分たちは何を目指しているのか。
誰に、どのような価値を届けたいのか。
それが分かっていることは、仕事に方向性を与えてくれる。
しかし同時に、一つのレンガをきれいに積むことにも価値がある。
昨日よりもうまく積む。
少しでも美しく仕上げる。
作業の中に工夫や楽しさを見つける。
そのような一人ひとりの真剣な仕事が積み重なるからこそ、結果として立派な大聖堂ができあがる。
大きなビジョンだけでも足りない。
目の前の作業だけでも足りない。
遠くにある目的を見ながら、目の前の一つに丁寧に向き合う。
その両方がそろって初めて、本当に良い仕事が生まれるのではないだろうか。
豊アルケミー株式会
代表取締役 桐山 宗久