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『フードコートの大混雑』 制約理論的に考えてみた
フロリダ州にあるケネデ宇宙センターを訪れた。
月面着陸やスペースシャトルといった大構想と細部の造りこみを両立し、実現してしまうアメリカの偉大さを大いに感じてきた。
そのことについては前号で紹介させていただいた。
『アメリカの強さ』 ゼロからのシステム構築
アメリカという国の偉大さを感じた一方で、同じ施設内にあるフードコートでは、ランチの注文から90分も待たされることになった。
それはそれでアメリカらしい感じもするが、世界中から人が集まっている場所なのだからもう少しなんとかせい!という気持ちにもある。
なんらかシステムに不具合があるとしか言いようがない。
最近学んだ制約理論(TOC:Theory of Constraints)の観点から、混みあって食事が提供できないフードコートをどう改善すればよいのか考えてみた。
まずは制約理論の簡単なまとめ。
制約理論(TOC:Theory of Constraints)
業務やシステムのボトルネックを特定して改善することで、全体のパフォーマンスを向上させるマネジメント手法TOCでは、システムのボトルネックを「制約」と呼び、その制約を改善することで全体のパフォーマンスを向上させます。
TOCの主な手順
①制約条件を見つける
②制約条件を徹底活用する
③制約条件にその他すべてを従属させる
④制約条件の能力を高める
⑤惰性に気をつけながらステップ1に戻るTOCのメリットとしては、コストや労力を抑えながら大きな効果を得やすいことが挙げられます。
客として観察できる範囲で、どこを直せばもう少しマシになるかを考えてみた。
自分なりにできることは制約条件を見つけることである。
店の状況
フードコートとは言っても、ショッピングモールのように飲食店が複数あるわけではなく、1店のみ。
店内はかなり広い。
オーダーの出来上がりは店内中央のモニターに表示される。
注文ポイントが多い
店にはタッチパネル式のオーダーシステムが4つ用意されていた。
それとは別に、対面オーダーとスマホからのテーブルオーダーも可能である。
最近のマクドナルドと基本的に同じシステムだ。
多くの客を捌くには一見良いシステムに見える。
メニューのオプションが多い
メインのメニューは特別多い感じはしないのだが、ソースやドレッシングなどのオプションが少し多いように感じられた。
選択時に少し煩わしさを感じたが、まあ普通と言えば普通かもしれない。
モニターが少ない、そして一覧できない
オーダー後、各自番号が発行される。そしてできあがればモニターに番号が表示され、セルフで受け取りに行く。
これもマクドナルドと同様である。
問題はモニターの表示だ。
広い店内であるがモニターは店内中央に2台あるのみだ。
大半の場所からモニターを見ることはできない。
そして2台あるモニターは少し離れており、2台を一望できる場所は本当に限られている。
2台のモニターには別々の番号が表示されているため、両方を確認しないと自分の番号を見つけることができない。
表示内容は同じにすべきだと思うが、これには理由がある。
受取カウンターが2か所
受取カウンターが2か所あるため、モニターをそれぞれ1台ずつ設置してある。
これが混乱の元凶である。
客からするとどちらのカウンターで受け取れるのか分かりようがないのだ。
それぞれのモニターを確認するしかない。
客は右に行ったり左にいったりすることになり、客の流れを作れないのである。
キッチンがボトルネック
キッチンがオープンになっており、中の人たちの動きがよく見える。
ここで働く人たちは大変だ。
一見システマティックに見える厨房ではあるものの、実際にはスタッフ同士の動線が交錯していたり、メニューのオプションが多いために、オペレーションが多くなってしまっている。
サラダであれば必要な分量をボウルに取り分け、ドレッシングをかける。
注文通りか確認し、適切なトレーに乗せる。
サラダ1つだけでも1分はかかってしまっている。
手際が悪いわけでもなさそうだが、手順通りにやれば、そのぐらいの時間はかかってしまうのだろう。
最初からパッキングされたものを提供すべきである。
ドリンクはコップを渡されるので、客がドリンクバーでセルフで行う。ここは特に混乱はなかった。
対応案
キッチンでの作業がボトルネックとなり、配膳がどんどん遅れていくという問題が起きている。
そのためにすべきことは・・
1.メニューとオプションを減らす
2.食事はパッケージ化し、キッチン作業を減らす
3.オーダーを止める(待ち時間を示す)
4.できあがり通知を分かりやすくする(簡単なのは店内放送)
まとめ
マクドナルド的なシステムを導入しているものの、トータル設計がうまくいっていないため、次々に入る注文に対して、製造が追いつかずギャップが開いていってしまう。
過負荷となりキッチンの製造効率が低下し、ますます提供が遅くなる。
そんな悪循環が発生している。
更に客数の多いディズニーワールドでは、そのような混乱は発生していなかった。
その理由は、入店時に待ち時間を案内することで、入口に制約を設定しているためだ。
客は予約を入れたり、自然とほかの店に流れたりする。
入りをコントロールすることで、顧客が不満を持つことを避けられる。
飲食店に限った話ではないだろう。
90分の待ち時間を無駄にしないため、いろいろ考察してみた次第である。
豊アルケミー株式会社
代表取締役 桐山 宗久